絵を言葉に置き換えるというのは、とても難しいことがあります。
詳細に詳細に、説明しようとすればするほど、中身がなぜか空疎になっていく・・。
この辺、自己紹介にどこか似ているかもしれません。
感覚でこれを知っている人は、ときにこれと逆のことを試します。
つまり、なるべく少ない言葉で語る。
安易な「○○系」などという言い回しは、何でもカテゴリー分けしないと安心できない
という不安の表れでしかありませんが、
的を得ているのかどうなのか、ちょっとわからない言葉というのも、たまにあります。
「勢いのある線」・・・これはその中のひとつです。
「上手!線が、勢いがある」
褒め言葉なのは分かるのですが、なにか違和感がある。
これは貴重な気づきのチャンスです。
つまり、モデルの輪郭を丁寧にトレースすれば
果たして「いいデッサン」になるのかという。
つまり、クロッキーには「いい線」と、そうでもない線があるということです。
もちろん、いい線というのはスピーディーならOK!!という簡単なものではなくて、
そこにはデフォルメを駆使した人体構造の適切な解釈(=高いレベルでの写実性)
など、「芸」があるかどうかが分かれ目なのです。
このあたり、車の運転に似たところがあるかもしれません。
私事ですが教習所に通っていたとき、
教官が「自分もスピードを出せるところでは出す」
と言ったことがあります。
逆に幼稚園の近くなどでは、ねっとりと粘るような速度で走らされたものでした。
デッサンのなかで、この粘るような遅さも、ぜひ楽しんでほしいのです。
狭い路地、サイドミラーぎりぎりの電柱や
向かいの高級車を息を止めてすり抜けた後、
思わず出てくるため息。
顔・手・足。
デッサンで、特に力量の分かるといわれる部分を辛抱強く描き終えて、
思わず出てくる「フゥーーー・・」。
数ある中でもこれは最高の「フゥ」だと思います。
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